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クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)

1.バイオダイナミックなクラニオセイクラル・ワークとは?

 クラニオセイクラル・ワーク(craniosacral work)は、日本語では頭蓋仙骨療法と呼ばれる。クラニオにはいくつかの種類というか流派があるが、ここでは当治療室で用いているバイオダイナミックなクラニオ(=クラニオセイクラル・バイオダイナミクス)について述べていきたい。

 人体の正中部分には,頭蓋骨とその中にある脳、脊柱とその中を通る脊髄があり、それらは全体として硬膜に包まれ(硬膜は,頭蓋骨部分では骨の内側に付着し、骨膜に移行する)、その内部は脳脊髄液で満たされている(つまり,脳と脊髄は硬膜組織でできた袋の中で、脳脊髄液という体液の中に浸かっている)。更に脳脊髄液の中には、命の息吹(breath of life=生命を生命たらしめている「生命力」そのもの)が生み出すポーテンシー(potency=生命エネルギー、生気)が存在する。この組織−体液−ポーテンシーという「生命体としての要」に直接働きかける治療手法がクラニオセイクラル・ワークである。
 クラニオの施術は、外見的には頭蓋骨や仙骨にごく軽いタッチ(「5gタッチ」といった言葉が使われることがあるが、実は5gなどという圧では強すぎて使い物にならない。最大でも1g以下)で触れているだけのものだが、実際にやっているのは、身体に現れる周期的で微細な動きを感じ取り、その動きを乱しているエネルギー的な「しこり」のようなもの(=停滞支点(inertial fulcrum))を取り除くことである。

 ともするとクラニオは頭蓋・仙骨の動き、あるいは脳脊髄液の循環を整えることがクラニオであるかのように説明されている(私自身が長い間,そう誤解してきたし,まだ多くの治療家がそう思っているかもしれない)が、実はそうではない。なぜなら、問題は頭蓋・仙骨の動きや脳脊髄液の循環の乱れ、それ自体ではなく、そうした乱れをもたらしているエネルギー的な「しこり」にこそあるからだ。
 バイオダイナミックなクラニオの施術の本当の目的は、頭蓋・仙骨に異常な動きをもたらす、エネルギーが不活性化して停滞した「しこり」のような点(これが停滞支点)を検出し、その停滞支点を除去することにある。このエネルギー的な「しこり」を取り除くことで、結果として頭蓋・仙骨の動きも脳脊髄液の循環も整うことになるのである。

 そうしたエネルギーの停滞を処理せずに、外に現れる動きの乱れだけに着目してその動きを整えたとしても、単に停滞支点が別の場所に移動するに過ぎないので、実際には頭蓋・仙骨の動きや脳脊髄液の循環が一時的に整ったように見えるだけに終わってしまう(ただクラニオを行なっている施術者の多くは、そうしたことに気づいていないようだ)。

2.クラニオセイクラル・ワークの始まりと発展

W.G.サザーランド クラニオセイクラル・ワークは、オステオパシーを学んでいた若き日のウィリアム・サザーランドに始まる。サザーランドはある時、頭蓋骨を構成する骨の中の側頭骨の形状に興味を引かれた。側頭骨は魚のエラによく似た構造をしているのだが、そこから彼は、側頭骨がある種の呼吸運動に関わっているのではないか、という啓示を得て、その検証を始めた。その結果,頭蓋全体に渡って周期的に生じている律動を見出すことになった。
側頭骨を中心とした頭蓋骨 早い段階からサザーランドは、自分が実は組織の不随意的な呼吸システムを調べているのだ、と認識していた。その呼吸システムが,健康の維持に非常に重要な意味を持っていることも。そして彼は、その呼吸システムを第1次呼吸(primary respiration)と名付け、その背後に「生命力」=命の息吹の存在を見出していく。そこからクラニオにおける基本となる2つの考え方が確立した。それは
1)生命は、それ自体を動きとして表す。
2)動きと健康の間には明確な関連性がある。

という考え方である。

 1940年代、米国で「クラニアル(頭蓋)の分野におけるオステオパシー」というコースがサザーランドの指導の下に始まり、その考え方が多くの治療家に知られることとなった。そして1970年代になると、純粋なオステオパシーのトレーニングを積んでいない人々にクラニオを教える最初の指導者が現れた。それがジョン・アプレジャーである。
 アプレジャーは脊髄の外科手術の助手を務める中で、実際にそれが微細な周期的律動を持っていることを目の当たりにして、この第1次呼吸を探求を始めた。そして、サザーランドらの命の息吹などの概念を持たない、純粋に解剖・生理学的で機械論的(バイオメカニカル)モデルに基づいた、クラニオセイクラル・セラピー(craniosacral therapy ; CST)を確立する。CSTは10ステップ・プロトコル(頭蓋仙骨治療を安全かつ効果的に行えるように考えられた、10ステップから成る治療手順)など、アプレジャー・スタイルとも呼べる独自の治療体系を持っている。そして現在、日本を含め、世界中で行われているクラニオの主流となっているのは、このアプレジャーのスタイルである。
 だが、それとは別にサザーランドの弟子のローリン・ベッカー、フランクリン・シルズらが提唱する、バイオダイナミクス・モデルに基づいた、よりサザーランドの考え方に近いクラニオが、ここに来て注目されつつある。それがバイオダイナミックなクラニオ(クラニオセイクラル・バイオダイナミクス craniosacral biodynamics)と呼ばれるものである。

3.アプレジャー・スタイル(バイオメカニカルなクラニオ)とバイオダイナミックなクラニオとの違い

 私が理解している範囲で2つのスタイルの違いをまとめてみよう(下の動画はセミナーでのひとコマ)。
 アプレジャー・スタイルとは…
頭蓋・仙骨のリズムは、静脈洞の中で周期的に繰り返される,脳脊髄液の産生と排出のリズムが形作っている、という機械論的モデル(これを、圧力一定モデルと言う)に基づく。
頭蓋・仙骨のリズムは8〜14回/分を1サイクルとするものである(この回数は個々人で,あるいは同じ人でもその時の体調などによって変化する)。従って、治療は全てこのリズムに基づいて行われる。
頭蓋や仙骨にホールドする手の圧は5g程度のごく軽いものとする(これが一般的に言われる「5gタッチ」である)。
治療で行うさまざまなテクニック──静止への誘導、頭蓋骨のリフト、CV4など──は,全て術者が自らの意志に基づいて自分で行う。
(頭蓋・仙骨の自動運動の動きは、便宜上、屈曲と伸展という2つの相に分けて考えるが)治療における全ての操作は、自動運動の屈曲と伸展が切り替わるポイント(これを中間位と言う)で行わなければならない。
心理・精神面の治療を行う手法として、体性感情解放(somato emotional reliese)というものがある(らしいが、私は名前しか知らない。興味のある方は、アプレジャーの著書『もうひとりの私』などを参照されたい)。
…といったようなものである。

 一方、バイオダイナミックなクラニオはというと…
頭蓋・仙骨のリズムは、命の息吹あるいは根源的基盤(Original Matrix)というものから生じている。この命の息吹が体液の中にポーテンシーを生み出すところから生命が始まる。その生命が根元的に持っているリズムが、頭蓋・仙骨のリズムとして感じられるものである。
頭蓋・仙骨のリズムは1種類ではない。最も根元的なリズムをLong Tideと言い、100秒で1サイクルというリズムを刻む.その上に2.5回/分のサイクルのリズムで動くmid-tideというものがある.このLong Tideとmid-tideは、どの人でもほぼ同一の一定したリズムである。そしてその上に8〜14回/分を1サイクルとするCRI(クラニアル・リズミック・インパルス)というリズムがある。CRIは個々人や外的な要因で変化しやすい上、トラウマやショックなどに触れた時、そこで現れる症状を制御できなくなる恐れがあるため、基本的にはmid-tide以上を使う。
CRI、mid-tide、Long Tideのどれを見る場合でも、ホールドする手の圧(というのは、表現として正確ではないが)は、数字的な目安はないが、非常に軽いタッチで行う。なお、CRI、mid-tide、Long Tideの間の切り替えは、術者の意識のありようを変えることで行う。
治療で行うさまざまなテクニック──静止への誘導、頭蓋骨のリフト、CV4など──は、全て患者主導(!)で行う。具体的には、アプレジャーのスタイルが術者が自らの意志で操作して行っているのに対し、例えば「静止に入りますか?」と(頭の中で)患者に問いかける形で行う。すると、患者の体がそうする必要があると判断すると、自然に静止へと入る。
mid-tideやLong Tideになると、既にその動きは屈曲・伸展といったカテゴリーでは言い表せなくなる(それでも一応、同じ言葉は使われるが)上、中間点も明確ではなくなる。それに、操作は患者主導になるので中間位を意識する必要はない。
心理・精神面の治療を行う手法の一つとして、フォーカシングをmid-tideあるいはLong Tideの状態で行う、というものがあるクラニオセイクラル・バイオダイナミクスVOL.1(なお、フランクリン・シルズはその著書『クラニオセイクラル・バイオダイナミクスVOL.1』の中で,安易に行われる体性感情解放が,逆に患者を再トラウマ化する可能性を示唆している)。
…と、アプレジャーのスタイルとはかなり異なったものとなっている。

 しかし、治療法あるいは治療体系というものは、それを創り出した人がどのような視点で人間というものを見ているかという、ある種の「哲学」に関わってくる。その差は人間を見る視点の違いであり、どちらが優れている/劣っている、ということではない。

4.無為の為(doing not-doing)

 3で二つのクラニオの違いを見てきたが、バイオダイナミックなクラニオの根幹にあるものは「無為の為(何もしない、ということをする)」で、これはサザーランド自身の臨床経験に基づいている。
 当初、サザーランドは自分から接触的に患者の頭蓋・仙骨の動きを読みに行き、その状態を元に自身の解剖・生理学的な知見を駆使して治療方針を決め、それを行なうというやり方を取ってきた。ところがある時、彼は施術者がこのように積極的に患者の状態に介入するより、何もせずただ手を当てていた時のほうがより良くなることに気づいてしまう。
 サザーランドは西洋合理主義的な考え方の人間だったので、この結果を「薄気味悪い」と言ってなかなか受け入れることができず、弟子たちにも伝えられないでいたが、最晩年になって一部の高弟にそのことを伝え、そこから東洋思想などを取り込んだ「施術者はただそこに立ち合うだけで、患者の状態には可能な限り介入しない」という「無為の為」に基づくバイオダイナミックなクラニオの施術が形作られることになった(ちなみに「無為の為」という言葉は老子から取られている)。

 ただ、この「無為の為」を巡っては、バイオダイナミックなクラニオの施術者の間でも、どこまでが「無為」と言えるのかについてF・シルズのような穏健派からC・リドリーのような原理主義的立場を取る人まで見解の相違があり、さまざまなタイプのバイオダイナミクスが生み出されている。

 * * *
 当治療室のクラニオセイクラル・ワークは、もともとアプレジャー・スタイルをベースとした形で始めたが、2004年からバイオダイナミクスに転換した。そして私自身がシルズとリドリー、両方の著書を翻訳し、そこから学んだため、バイオダイナミクスとしては両者の中間のような形になっている。

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